「進次郎vs安倍」に見えた"組織に生きる難しさ"
朝日新聞が先日行った世論調査。「ポスト安倍」にふさわしい自民党の政治家を7人の中から選んでもらったところ、進次郎氏は14%。
2ヵ月前の前回調査より6ポイントも落としたというのです。
ちなみに最多は、25%の石破茂氏(前回は23%)でした。
進次郎氏はなぜ、これほど急激に嫌われてしまったのか。
「セクシー発言」とか「女性問題」とか「育休」とか、思い当たる節はいろいろありますが、ここは単純に
安倍総理の軍門に下っちゃった感が半端ない
からなのでは?
ちょっと見ていきましょう。
アイドル並み人気の政治家
その人の行くところ、女性(オバサン多し)の歓声が響き渡る。
まるで「自民党のジャニーズ」。
それが小泉進次郎という男です。
持っているものはたくさん。
まず「血統」。
父は元総理大臣、兄は俳優、妻は美人アナウンサー
……って、皆さんご存知ですね。言うまでもないか。
それから「票」。
総選挙当日、投票締め切りの20時になったとたん各メディアが当確を打つような議員の筆頭格。それぐらい圧倒的な強さを誇る。
さらにこの人、「視聴率」も持っているんです。
ニュースや情報番組で進次郎氏を採り上げると、分単位の視聴率グラフがけっこう跳ね上がるのは知る人ぞ知る話。
だからネタ薄の週末ニュース番組などでは、彼が地方視察でもすれば、その「密着」で2~3分を埋めたりしています。
人気がある➡視聴率を取れるからテレビに映る➡また人気が上がる……という好循環(進次郎氏にとっての)なんです。
これだけ女性人気が高いと、反発もあって男性からはそっぽを向かれるのが普通ですが、この政治家は特別。オジサンたちも一目置いているところがありますよね。
そのわけは、なんといっても「トンガリ感」。
「自由民主党」という"保守の権化"みたいな組織に身を置きながら、党にとってはピリ辛なことをはっきりと言う。
失言した大臣をなじり、党の長老たちを批判する。
党総裁選の際には、「石破さんに投票します」と明言したこともありました。
ああいう姿勢が、組織に抗えず悶々とするオジサンたちの心もつかむわけです。
しかし……それが……
進次郎氏が黙っちゃったワケ
父・純一郎元総理譲りのキャッチーなワンフレーズで、既得権者にとっては耳の痛い一言をズバリ(内容は薄いけど)。
そんな、進次郎氏を進次郎氏たらしめていた持ち味が、いまやすっかり鳴りを潜めてしまいました。
これはやはり、大臣になったからでしょうね。
たとえば就任早々、ニューヨークでやらかした
「気候変動のような問題は、セクシーに取り組まなければならない」
なる一言。
あれ、一介の議員による発言だったら
「また進次郎が面白いこと言ったな」
で済んでいた可能性が高いのに、やはり現職の大臣が口にしたとなると重みが違う。
日本政府の公式見解、ということになっちゃいますからね。
そういうことを意識して、なんとなく口をつぐんでいるのでしょう。
「組織人」へと変貌したワケ
口数が減ったのと同時に進次郎氏、これまでの「イキがっていた」態度も改め、自民党という組織で生き抜いていく意思を固めた様子も見えます。
どうして姿勢まで変貌したのか。ぼくの予想する理由は2点。
①家庭を持った
大臣就任の直後、彼はパパになりましたよね。
「親」という肩書きを背負ったら、それまでのヤンチャをやめて、安定志向に生まれ変わる……
そんな人をぼくは、たくさん見てきました。
皆さんの周りにもいませんか?
②父の"地位"が、相対的に低下した
進次郎氏が過去あれだけ大胆でいられたのは、本人らは否定すると思うけど、やはり純一郎元総理という父親の存在があればこそ。
とんでもなく国民的人気の高かった総理大臣でしたからね。実績はともあれ。
しかし安倍晋三という人物が、人気こそ純一郎氏に全然及ばないものの、とにかく日本の政治史上ナンバーワンの宰相になっちゃった。
「桜を見る会」問題に対する答弁なんてそうとうヒドイと思うけど、そうしたもろもろもなんのそのと突っ走る歴代最長内閣。
経済界だって、できればいつまでも安倍政権が続いてほしいと願っているくらい。
進次郎氏も、その安倍総理に歯向かうのは不利だと判断したんでしょう。
まとめ
ということで、きょうの教訓。
人気が下がったとは言っても、元々"劇高"だったものに、少々陰りが出た程度。進次郎氏としては、その「不動の人気」をキープするより、自民党の中で安定して出世していく「将来」を選択したわけです。
そう。
いくら”孤高”を貫きたくても、そしてそのためのバックボーンがそれなりにあったとしても、それは組織の中では難しいということです。
サラリーマン(というか、組織人)の皆さん、参考になりますね。
それから、組織を運営していく側にとってもヒントとなりそう。
はねっかえりの面倒なメンバーがいたら、うまいこと「執行サイド」に取り込んでしまえば落ち着く、ということですね。
組織運営しているほうの論理でモノを考えさせるように仕向ければ、じゃじゃ馬は静かになるという良い例です。
安倍さん、うまくやったよね。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
次回の『小骨チェーサー』もぜひ読みにいらしてください。