小骨チェーサー

世の中を斜めから、でも前向きな目線で見るブログ

「森友問題」とあまりにもそっくり!63年前の古典『点と線』

数日前、新聞の小さな記事に目が留まりました。

「『点と線』舞台のレストラン 破産手続き」 

 

東京・有楽町にある、『レバンテ』という老舗レストラン。

名店も時代の流れには抗えず苦戦していたところに、コロナショックが追い討ちをかけ、閉店に追い込まれたといいます。

こんなニュースが続かないよう、祈るしかありません。

そして、今回採り上げたいのは、店ではなく作品のほうです。

※以下、多少のネタバレがあります

 

日本ミステリー史の金字塔

『点と線』をご存知ですか?

松本清張出世作で、社会派推理小説の草分けと言われるミステリー。

ビートたけしさん・高橋克典さん・柳葉敏郎さんのトリオでドラマにもなりました。

 

点と線 (新潮文庫)

点と線 (新潮文庫)

  • 作者:清張, 松本
  • 発売日: 1971/05/25
  • メディア: ペーパーバック
 

 

福岡の海岸で若い男女の遺体が発見される。男性は中央省庁の官僚、女性は割烹料亭の女中(多少"水商売風"といったニュアンスが漂っています)。当初は単なる心中と見られたが、調べていくうちに事件性が。だが、疑わしい男には鉄壁のアリバイがあり……

 

改めて読み返してみましたが、舞台はぼくなんかの親世代がまだティーンエイジャーのころの日本ですからね。いろいろな道具立てが今とは全然違う。

桜田門の警視庁から捜査へは都電で。新幹線はまだ走っていないし、北海道へ渡るときは連絡船。事件発生は1月ですから、まるっきり『♪津軽海峡冬景色』の世界です。

定期航空便は既にあったけれどあまり一般的ではなかったらしく、アリバイ崩しに躍起となる刑事たちも、最初は存在を忘れていたくらい。

中心人物の男は、女中2人(死んだ女性とは別)を連れ出し食事をご馳走するんですが(このとき待ち合わせた店が『レバンテ』)、いくら常連でも、そういう行為って現代ではちょっと考えにくい気がします。「上級国民」なら、今でもするのかな?

 

アパートの電話は呼び出しで、ビールを冷やすのは井戸水。男女の2人連れは「アベック」と呼ばれ、「愛人」ではなく「2号さん」

「時代を感じさせる」というよりは、もはや「古典文学」に近い。

 

といった具合に、何もかもが今とは違う昭和30年代初めの日本ですが、1つだけ、現代とのいや~な共通点がありました。

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※写真ACより

 

森友学園問題」とそっくり

作品中で命を落とす官僚・佐山憲一は、××省の課長補佐。この××省は汚職問題に大揺れで、既に逮捕者も出ています。佐山課長補佐にも捜査の手が伸びる寸前。その「死」によって得をしたのは誰かと言えば……

 

似たような話を、最近聞いたことはありませんか?

そう。

 

森友学園問題にからんで自ら命を絶った財務省の職員赤木俊夫さんのケースとそっくりなんです。

 

森友問題にかかわる公文書の改ざんをさせられたことが原因で、赤木さんが自殺したのは2018年3月のこと。

それから2年経った先月、赤木さんの残した「手記」が公表されました。

 

「すべて、佐川(宣寿元)理財局長の指示です」

「抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました

「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」

家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です

そんな文言が綴られているといいます。

 

『点と線』の"被害者"、佐山課長補佐と

現実のほうの"当事者"、佐川理財局長。

なんだか因縁めいたものを感じてしまいました。

 

再調査させよう! 裁判を注視しよう!

命と引き換えの訴えが記された「手記」が出てこようと、麻生財務大臣など関係者は木で鼻をくくったような対応。

そこで赤木さんの奥様たちは、ネットのキャンペーンサイト「Change.orgを利用して、再調査を求める署名を集めています。

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賛同者を募るメールがぼくにも届きました

 

メールが届いた時点(キャンペーン開始3日後)での賛同者は約18万7500人でしたが、4月3日20時現在、28万1000人を上回っています。「Change.org」史上、最速最多の数だそうです。

 

www.change.org

 

賛同される方は、ぜひクリックを。ぼくも署名しました。

 

もう1つ、しっかりと見守りたいのが裁判の行方です。

赤木さんの奥様は国と佐川氏を相手取り、約1億2000万円の損害賠償を求める訴えを起こしています。

この裁判の過程で何が明らかになるのか、注目です。

 

ちなみに民事裁判だと、マスコミの採り上げ方はいくらかトーンダウンします。

「忖度だ!」と騒ぐ人もいますが、ニュースメディア出身者のぼくから言わせてもらうと、これはそういうことではなく、「民事」という特性によるもの。

判決によって、「被告は犯罪者である」と決定づけられる刑事裁判と違い、民事ではいくら被告側に問題があろうと、法的には悪事を働いたことにはならない。

だから"筆致"が弱まらざるを得ないんですね。

 

それから裁判が始まっても、コロナが今の調子のままだったら、やはり扱いはたぶん小さくなります

だからみんなで、ちゃんと注視しておかなければいけません

 

逃げ得は許すな!

『点と線』の世界では、佐山課長補佐が死亡したおかげで、彼の上司や同僚が出世を果たしています。

 

一方の赤木俊夫さん。

普段から「私の雇用主は日本国民です」と話していたそうです。

 

そういった実直な部下を踏み台に、のうのうと生き延びたヤツら

小説なら見逃せても、現実の世界では

絶対に許すわけにはいきませんよね。

 

⇩こちらも、松本清張作品と現実との比較。

 

kobone-chaser.hatenablog.com

 

最後までお付き合いをありがとうございました。

次回の『小骨チェーサー』も、ぜひ読みにいらしてください。