殺人事件で容疑者逮捕……新聞・テレビの「報道パターン」はこれだ
【これ知ってるとニュース通】毎日毎日、いくつもの「事件」 が新聞やテレビやネットをにぎやかしています。
事件の内容は様々ですが、見比べてみると、報道の「パターン」 は割と似たり寄ったり。というのも、実は報じる側が、いろんな”お約束” に縛られているからなんです。
きょうは、「犯人逮捕の報道」の”お約束”について。
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「逮捕会見」のお約束
世間が注目するような殺人事件が発生。
捜査して容疑者(警察用語は「被疑者」)を逮捕すると、 警察は会見を開きます。
マイクの前に座るのは、多くの場合、県警(警視庁・府警・道警) 本部の刑事部長か所轄の署長。
そして第一声は、たいていこんな内容です。
- ▽▽殺害事件は〇〇人の捜査員を投入し捜査した結果、 被疑者を逮捕した
- 逮捕者は……(氏名・住所の一部・職業・被害者との関係など)
- 市民の皆さんの捜査へのご協力に感謝。今後、 事件の全容解明に向けて誠心誠意努力する
実は、報道陣に配った紙を読み上げているだけ。
そしてこの「口上」が終わると、 テレビカメラは退出させられます。会見自体は続くのですが、 撮影がNG。メモを取ることだけができます。
「レク」のお約束
容疑者の住所が判明すると、その周辺で記者やリポーターは、「 容疑者を知る人」の声を拾おうと歩き回ります。親族とか勤務先、 あるいは「以前の同級生」などにもアタック。
ただ、どうしても入手できないのが、容疑者本人の話です。 こればっかりは警察に頼るしかありません。
所轄署では「レク」と言って、 記者を集めて警察側が情報公開をするミーティングが行われます( カメラは禁止)。
逮捕後2~3日間は、レクが朝夕2回あったりするのですが、 徐々に減少。
こうして、その事件に関するニュースも、下火になってきます。
「容疑者の認否」のお約束
上の記事にも書きましたが、「逮捕」というのは
悪いことをした人を、制裁のために捕まえる
ことではありません。単に
その容疑者が、その犯罪をした可能性が高い
という状態なだけで、いわば警察のみが、「コイツが犯人だ」 と申し述べているに過ぎないんです。
そしてニュースというものは、曲がりなりにも「 双方の言い分を併記する」のが大原則。
だから事件報道では、容疑者が、 自分の逮捕に対してどう主張しているのか、つまり「認否」 について、必ず採り上げます。
「××容疑者は、容疑を大筋で認めている」
とか
「××容疑者は、『私はやってません』と話している」
といった感じ。
ただしこうした情報の出元=警察は、 容疑者がどう主張しているか教えてくれないこともあります。 そんなときの決まり文句がこれ。
警察は、××容疑者の認否について、明らかにしていない
「疑いが晴れたとき」のお約束
注目の殺人事件などで容疑者が逮捕されると、 その個人情報をネットにさらそうとするヤカラが、 必ずと言っていいくらい現れます。
あれ、ぼくは「ヒーロー願望」や「目立ちたがり」 からやっているのだと思っていましたが、 個人的にブログを書くようになったら、別の理由がわかりました。
要するに、自分のサイトのPV数を増やしたいんですね、きっと。
もういい加減やめましょうよ。
「何様のつもりなんだ」という道徳的な問題は、もちろん大あり。
そしてしつこいようだけど、「逮捕」はあくまでも「 犯罪をしたと疑われている状態」に過ぎない。「濡れ衣」 ってこともときどきあるし、軽めの犯罪などの理由で「起訴猶予」 になることだってある。容疑者=犯罪の実行者とは限らないんです。
さて。
逮捕されたとき「××容疑者」 と名前を出して報道したものの、 後になって上記のようなことになった場合、普通「名誉回復報道」 がなされます。
「逮捕された男性は、その後〇〇ということが判明し、 身柄の拘束が解かれました」
などと、今度は名前を出さずに、続報を入れるわけです。
ちなみにこの例の通り、一般の人は「男性」「女性」 と表現されますが、容疑者や犯罪者は「男」「女」となります。
これも”お約束”ですね。