【新型コロナウイルス】勃発!専門家"争奪戦"… テレビ局でいま何が?
当『小骨チェーサー』は一応、日々のニュースに題材を摂ったブログなんですが、こう毎日毎日毎日毎日、ニュースが「新型コロナウイルス」一色だとねえ……。
仕方ない。きょうはニュース分析とかではなくて、完全なるサイドネタ。
今勃発している(と思われる)激しい"専門家争奪戦"において、メディアの現場の予想状況を、生々しくお届けします。
専門家がテレビ局を"はしご"
ぼくは20年以上、ニュースメディアの世界で働いていました。
なので「24時間テレビ点けっぱなし」なんてオフィス環境だったのですが、今は別分野に異動。テレビは帰宅後、ちょっと見る程度になっています。
だから以下は想像。
朝も昼も夕方も夜も、ニュースやワイドショーが「コロナ漬け」だとなると、おそらく同じ専門家の方を、あちこちの番組で見かける状態になっているのでしょうね。
過去の経験から予想すると
あたりの方々が引っ張りだこになっていると思われます。
ぼくが拝読しているはてなブログの1つで、どなたかが、
「テレビ局はよく、あんなにピッタリの専門家を見つけてくるものですね」
と感心してらっしゃいましたが、それはこういうときに備えて各番組で
「識者リスト」を用意しているから。
専門分野とお名前、連絡先がリストになっているものです。
その連絡先も、研究室の電話番号などだと意味がない。深夜早朝や土日でも役に立つよう、携帯の番号が記載されていることが重要なんです。
メディアに重宝される専門家とは
ではこのリストに載っている方、つまりメディアが出演や取材のお願いをしやすい専門家とは、どんな方々でしょうか。
①お話が短くわかりやすい方
そのニュースに詳しくない視聴者や読者の耳にもなじみやすいコメントを、しかも1分ではなく20秒でまとめてくれる方が望ましい。
あと生放送番組のMCというのは、「台本にないことを聞きたがる」という本能を持っている人種。その人たちからの"変化球"もちゃんと打ち返せるだけの「当意即妙さ」が求められます。
②関東を拠点にしている方
『ミヤネ屋』などごく一部を除くと、ニュースや情報番組はほとんどが東京キー局の制作。研究や授業の合間にスタジオまで来てもらうとなると、どうしたって関東近郊が勤務先の方に限られます。
今回で言うと、沖縄県にお一方、高名な感染症の権威がいらっしゃるのですが、平日の生出演は、さすがにしておられないんじゃないかな。
③温厚な方
記者もディレクターも人の子ですからね。いつもイライラしている教授、「こんなことも知らないの?」なんて嫌味を言う専門家(そしてたいていの場合、担当者は勉強不足のまま打ち合わせに臨みます)などとは、なるべくかかわりたくありません。
「この先生は気難しい」などといった情報は社内で共有されるので、やがてどの番組からも敬遠されることになります。
①②③すべてをクリアする専門家となると、それほど多くはありません。
結果、同じ先生方が局を股にかけて出演することになり……
争奪戦の火ぶたが切られます。
感染症だけでなく、たとえば北朝鮮問題とか中東情勢、スポーツ界の不祥事などでも、専門家のバッティングはよくあること。
そうなるとありがちなのが、次のような光景です。
専門家を「横取り」
C「A先生、おはようございます。BテレビのディレクターのCです。きょう17時からの生出演、よろしくお願いします。きのうお話しした通り、16時15分に大学まで迎えの車が参りますので」
A「ああ、ちょうど連絡しようと思っていたんだけどね。迎えの車は不要ですよ。お宅の前に、D放送の番組へ出ることになったから」
C「え! 何時ごろまでですか?」
A「16時半ごろまでと言ってましたね。Bテレビまでは車で15分もあれば着くから大丈夫だってD放送のディレクターが言うので、お受けしたんだけどね」
Cディレクターにとって、かなり冷や汗ものの事態となってしまいました。
この場合、A先生がBテレビのスタジオに入るのは、順調に行っても放送のせいぜい10分前。軽くメイクもしますから、本番に向けた打ち合わせなどほとんどできません。
ちなみに東京のテレビ局ですが、
NHKは渋谷
日テレは汐留
テレ朝は六本木
TBSは赤坂
テレ東は谷町
フジは台場にあります。
NHK以外はすべて港区内なので、局間移動は確かに15分程度といったところ。
ただしフジテレビだけは別。あそこは局舎が「離れ小島」にあるので、レインボーブリッジが渋滞したらチェックメイトです。
「ったく、D放送のくそディレクターのヤロー!後から先生の予定を押さえるなら、こっちに一言断るのが仁義だろ!」
と毒づくCディレクター。なんだか任侠の世界みたいですが、テレビ界ってこういう古い体質をいまだに残しているんです。
それはさておき、この場合どうするか?
Cディレクターが実行したのは、D放送まで先生を迎えに行くことでした。
本番中のD放送スタジオのすぐ近くで先生を待ち、「少しでも遅れたら承知しないぞ」とプレッシャーをかけたんです。
そして先生と同じ車に乗り、15分の移動時間を利用して、これから出演してもらうBテレビの番組の流れを説明したのでした。
以上の物語はフィクションです。実在の団体・人物とは一切関係ありません。
……が、似たようなことはきっと起きていると思いますね。
専門家の先生方も本当に大変ですが、メディア関係者のほうもきっと疲弊。
以前も書いたように
「新型コロナウイルス、早く収束してくれないかな」
と、メディアも思っているはずです。
なお上記のケースでは、「関係者が気をもむ」程度で済みました。
次元が違うのは、国政選挙の特番で党首レベルが生中継に出るときと、オリンピックで日本のメダリストが各局の放送ブースを“行脚”するとき。
これらはスケジュールが、本当に「秒単位」で組まれています。
たとえ30秒でも押そうものなら、次の出演予定局はもちろん、党やJOCからもクレームは必至です。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
次回の『小骨チェーサー』も、読みにいらしてください。