執行猶予なしだけど、殺人の被告を「保釈」……これで良かったのか?
保釈された熊沢英昭被告と夫人の仲睦まじげな姿を、『週刊文春デジタル』が報じていました。
世論は二分されていますが、皆さんはどのようにお感じですか。
そのお考えのヒントになりそうな記事を2本、ご紹介しましょう。
1本はジャーナリストの、そしてもう1本は、はてなのブログです。
殺人罪での保釈は異例
引きこもり状態の上、自分や妻に危害を加えた長男(当時44)を刺殺したとして、殺人罪に問われた元農水事務次官・熊沢英昭被告(76)。
16日の裁判で、懲役6年の実刑判決が言い渡されたものの、東京高裁の決定により、20日に保釈されました。
文春デジタルによれば、1泊7万円もする都内の高級ホテルで、夫人と過ごしているようです。
熊沢被告は「保釈」されたのであって、「釈放」されたわけではありません。
仮にこのまま検察側も弁護側も控訴しなかったら、懲役6年の刑が確定し、収監されることになります。今はつかの間の自由というわけですね。
23年前の事件との「大きな違い」
「今回とそっくりな事件が、23年前にあった」
そう指摘するのは、オウム裁判の傍聴記などで知られる、ジャーナリストの青沼陽一郎氏。『東洋経済オンライン』に寄稿しています。
1996年、東京・湯島のマンション。当時52歳の父親が、家庭内暴力を繰り返す長男(当時14)を、金属バットで殴り殺しました。
父親は自首。その後一審で、懲役3年の刑が確定しました。
23年前のほうが、刑が軽いことにお気づきでしょうか。
この差が生まれた背景について青沼氏は、「医師や警察に相談していたか」だった可能性を挙げています。
湯島の父親は、精神科クリニックに長男のことを何度か相談。そのアドバイスを実行に移していました。
一方の熊沢被告。長男と同居して1週間後には犯行に踏み切っています。その間、専門家と話すようなことはありませんでした。
nanimositeinaiさんの主張
はてなブログで執筆している、ブロガーの『nanimositeinai』さん。
熊沢被告の事件について、「世間の多くの人は同情的だが、私は違います」と述べておられます。
ご意見を、勝手ながら引用させていただくと
「発達障害」「統合失調症」「アスペルガー症候群」「引きこもり」「妹の自殺は 英一郎が原因」 違うと思います
反対なんです
我が子を包丁で滅多刺しに出来るような父親だったからこそ
妻が鬱病になり、娘が自殺し、長男が放蕩息子になった
と思うのです
でないと、
障害を持つ子の家族、 毎日休まず たゆまず 懸命に
その障害に 真正面から向き合い
何十年も世話を続けている家族 が浮かばれません
nanimositeinaiさんの心からの叫びだと、ぼくは感じました。
「金の力」で解決できなかったのか
熊沢被告に実刑判決が下された日、ネットなどでは
「あの人に執行猶予を付けないなんて、日本の司法はおかしい」
といった意見が多く聞かれました。
確かに同情すべきところはたくさんある。
でもぼくは「実刑判決はやむを得なかった」と思い、ブログを書きました。
農水事務次官まで務め、その後天下りし、さらにチェコ大使まで経験した、エリート中のエリートである熊沢被告。一般の人には想像もできないほどの退職金を得ていると思われます。しかも文春デジタルによると、夫人の実家は資産家だそうです。
そんな人なのだから、長男の問題はなんとしてでも、「殺害」以外の方法を模索してほしかった。
実績あるカウンセラーに相談するなり、別の家に住まわせるなり、金の力で解決することは、一般の人よりずっとできたはず。
引きこもりとか家庭内暴力とかの問題を抱え、でも経済的に苦しい家庭というのは、今の時代、本当に多いと思うんです。
そういうつらい思いをしている方が、今回の判決や、保釈後の様子などを見たとき、どう感じるでしょうか。
殺人罪の被告が保釈されるのは異例のことです。
ネット上には「さすがにやり過ぎ」という意見もそれなりに見受けられます。執行猶予なしの判決が出たときほど、被告寄りの声ばかりではありません。
ここまでお読みいただいた皆さんは、どう思われますか?
もう1つ気になること。
今回の保釈、なんとなく裁判所が世間に「忖度」しているような感じがしませんか?
こういうときの"世論誘導"って、ちょっと危険な香りがするんです。
【最初の公開から11時間後の追記】
今回採り上げさせていただいたnanimositeinaiさんが、コメントを寄せてくださいました。
とても考えさせられる内容です。
ぜひ、「関連記事」の下のコメント欄も合わせてお読みください。
※"新着扱い"にするため、いったん下書きに戻して、再アップいたしました。
ご理解ください